ここまでは比較的分かりやすいものを紹介しました。エスプラネード北側の公園エリアに生育するマングローブで目立たなかったものを紹介します。

フタバナヒルギ(Rhizophora apiculata

フタバナヒルギはヤエヤマヒルギと同じく、支柱根を出します。また高木になるため花も見づらいことが多いでしょう。この公園にあるものは、ほとんどがヤエヤマヒルギですが、本当に数本だけフタバナヒルギが混じっています。ポイントは花柄の長さと花序の配列です。フタバナヒルギの萼には、コルク質の苞葉があります。

フタバナヒルギ(Rhizophora apiculata
コルク質の苞葉が奥に見える。
クラブマングローブ(Aegialitis annulata)

クラブマングローブはイソマツ科の低木です。困ったことにまだ和名がありません。この場所で見られるものは、人の背丈よりも低いものばかりです。10月頃から非常に短い期間だけ白い花を咲かせます。

ヒメヒルギ(Bruguiera parviflora

ヒメヒルギは、オヒルギの仲間です。葉は小さく、比較的細いものが多いです。胎生種子も写真のようにほっそりとしています。学名のparvifloraは小さな花という意味です。ヒメヒルギは、林縁に沿ってほんの数本だけ生えています。これを発見できれば、あなたの目はかなり鋭いと思います。

サキシマスオウノキ(Heritiera littoralis
厳密に言うと半マングローブ(mangrove inhabitants)に分類されると考えられる。

サキシマスオウノキはアオイ科に属する樹木です。古い資料ではアオギリ科に分類されているかもしれません。名前の通り、北は日本の先島諸島から南はオーストラリア北東海岸まで広く分布しています。この公園に沿って1本だけ生えています。サキシマスオウノキは立派な板根を作ることでも有名ですが、ここにあるものはまだその域に達していません。

サキシマスオウノキ(Heritiera littoralis) の立派に成長した板根の一例

「その3」までお付き合いくださり、ありがとうございました。私の計算ではケアンズに34種類のマングローブ(半マングローブを含む)が自生しています。このうち3種類は筆者が発見したものです。1種類はオーストラリア初記録、1種類は筆者が命名した新品種です。この件については、またの機会に紹介させてください。

cairnsfg

ケアンズの自然観察家。マングローブを徹底的に調べ、世界で最も希少とされるIUCN絶滅危惧種のヘインズオレンジマングローブがオーストラリアに自生していることを発見。2018年には新品種のダンガラオレンジマングローブの発見を発表。世界遺産Wet Tropicsカソワリアワード2017年ファイナリスト。日本野鳥の会会員。BirdLife Northern Queenslandケアンズ地区コーディネーター。

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