その1ではエスプラネード北端を散策しました。せっかくなので、もう少し北まで進みましょう。とは言ってもあと200メートルくらいの距離です。

地図にはNorth Cairns Reserveと書いてありますが、この名前で呼ぶのは役所の人ぐらいでしょう。地元の人はホッケーグラウンドと呼びます。このグラウンド沿いはマングローブ林です。ここではまた違ったマングローブが見られます。

ムラサキミズヒイラギ(Acanthus ilicifolius

ムラサキミズヒイラギは、 高さが 1~1.5mくらいのキツネノマゴ科の草花です。ヒイラギのように棘のある葉が特徴です。マングローブには樹木だけでなく、こうした草花やシダ、ヤシの仲間も含まれています。マングローブというのは、いろいろな種類の植物が潮の満ち引きのある潮間帯に生育する植物群の総称と言えます。

ニセオヒルギ(Bruguiera exaristata

ニセオヒルギは、「ニセ」と付くだけあってオヒルギとよく似ています。葉はオヒルギよりも小さく、萼が角張っているのが特徴です。ホッケーグラウンド北側の一帯はニセオヒルギの多い場所です。 萼 の色もほぼ決まって黄緑色です。

Ceriops australis
注記:和名がないため、筆者は勝手に ミナミコヒルギと呼んでいる。

ミナミコヒルギは、オーストラリア北部とパプアニューギニアの南海岸に分布するヒルギ科の樹木です。日本のコヒルギ( Ceriops tagal)と良く似ています。ケアンズにはミナミコヒルギとコヒルギの両方が分布しているのでご注意ください。写真の細いものは胎生種子と呼ばれ、親木から離れる前に種から根が張り出している状態です。このまま落ちて地面に突き刺さり発芽するものや、水面に落ちて浮かび、流れ着いた場所で発芽することもあります。世界の熱帯・亜熱帯地域に同じ種類のマングローブが広く分布しているのは、潮流や海流の助けを借りた種子散布が理由だと考えられます。

コヒルギの胎生種子は少し縦溝がある。根元の茶色の部分(実)の形状も良く見ると違う。
ツノヤブコウジ(Aegiceras corniculatum

ツノヤブコウジは、その名の通り、角のような実を付けます。7月から10月にかけて白い花をたくさん咲かせます。普段は寂しいマングローブに活気が生まれたようです。葉っぱしかない場合は、ちょっと判別が難しい種ですが、種は長く枝に残るため、種を探しながら歩くことをおすすめします。

エスプラネードの端から400mほどの距離で8種類のマングローブに出会うことができました。実はこの他にも隠れたマングローブ(半マングローブを含む)があります。本気で探したい方は「その3」にお進みください。

cairnsfg

ケアンズの自然観察家。マングローブを徹底的に調べ、世界で最も希少とされるIUCN絶滅危惧種のヘインズオレンジマングローブがオーストラリアに自生していることを発見。2018年には新品種のダンガラオレンジマングローブの発見を発表。世界遺産Wet Tropicsカソワリアワード2017年ファイナリスト。日本野鳥の会会員。BirdLife Northern Queenslandケアンズ地区コーディネーター。

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