マングローブを歩く その1
マングローブとは何ぞや?確かに名前を聞いたことはある。でも詳しくは知らない。それもそのはずで、日本では熱帯や亜熱帯の限られた場所でしか見ることのできない海辺や河口に生育する植物です。多くの植物が塩水を苦手としますが、マングローブはこうした場所でも生育できる特別な植物と言えます。
オーストラリア北部はかなり赤道に近いため、その海岸や河口の大部分でマングローブが見られます。その中でも北クイーンズランドに位置するケアンズはマングローブのホットスポットです。オーストラリアには46種類のマングローブが自生していますが、その約8割がケアンズで観察できます。ここではケアンズの市内の歩ける範囲で観察できる代表的なものを紹介しましょう。
ケアンズの町をエスプラネードに沿って北に歩き続けるとマングローブに行き当たります。その中で赤色からピンク色の花が付いている樹木があればオヒルギさんです。花と言いましたが、実は萼(がく)です。花びら自体は、開花後すぐに落ちてしまいます。この花びらがオレンジ色なので、英語ではオレンジマングローブと呼ばれています。
ヤエヤマヒルギは鈴のように白い花をいくつも付けます。一見特徴が少ないのですが、ヤエヤマヒルギの特徴は根っこにあります。支柱根と呼ばれる根っこを幹から四方八方に張り出しています。エスプラネードの北側には、これとよく似たフタバナヒルギも小数生育しています。
ヒルギダマシは11月頃から雨季に柿色の花を咲かせるキツネノマゴ科の植物です。エスプラネードの北端で一番最初に出くわすのがヒルギダマシでしょう。葉の表面は緑色でツヤがあり、裏面は白っぽくツヤはありません。太陽の光が当たるとキラキラ輝いて見えますが、全体に白っぽく見えるので、慣れてくると遠くからでもヒルギダマシと分かります。
エスプラネード北端の公園エリアをもう少し粘り強く見ると、一番端の方に背丈ほどのヒルギモドキを観察できます。葉っぱの先がちょっと窪んでいるのが特徴です。日本では自生地が減少し、絶滅危惧種に指定されています。日本とオーストラリアでまったく同じ種類の木なので、どのような植物なのか見るだけでも価値があるでしょう。それにしても、「ヒルギダマシ」と「ヒルギモドキ」という名前は、ちょっと意地悪なネーミングですね。
この記事では4種類のマングローブを紹介しました。日本では珍しいマングローブをケアンズではお散歩ついでに観察できます。