マングローブとは何ぞや?確かに名前を聞いたことはある。でも詳しくは知らない。それもそのはずで、日本では熱帯や亜熱帯の限られた場所でしか見ることのできない海辺や河口に生育する植物です。多くの植物が塩水を苦手としますが、マングローブはこうした場所でも生育できる特別な植物と言えます。

塩水でも大丈夫(ちなみに、左側がヒルギダマシ、中央右寄りはハマザクロ)。
水面から見える細いものはマングローブの呼吸根。つまり根っこから呼吸できる。

オーストラリア北部はかなり赤道に近いため、その海岸や河口の大部分でマングローブが見られます。その中でも北クイーンズランドに位置するケアンズはマングローブのホットスポットです。オーストラリアには46種類のマングローブが自生していますが、その約8割がケアンズで観察できます。ここではケアンズの市内の歩ける範囲で観察できる代表的なものを紹介しましょう。

オヒルギ(Bruguiera gymnorhiza

ケアンズの町をエスプラネードに沿って北に歩き続けるとマングローブに行き当たります。その中で赤色からピンク色の花が付いている樹木があればオヒルギさんです。花と言いましたが、実は萼(がく)です。花びら自体は、開花後すぐに落ちてしまいます。この花びらがオレンジ色なので、英語ではオレンジマングローブと呼ばれています。

ヤエヤマヒルギ(Rhizophora stylosa
一部の資料ではオオバヒルギ(Rhizophora mucronata)をヤエヤマヒルギとしている場合もある。ノーム・デューク博士から直接聞いた話しによると、この2種類は遺伝子レベルで差異が認められないらしい。

ヤエヤマヒルギは鈴のように白い花をいくつも付けます。一見特徴が少ないのですが、ヤエヤマヒルギの特徴は根っこにあります。支柱根と呼ばれる根っこを幹から四方八方に張り出しています。エスプラネードの北側には、これとよく似たフタバナヒルギも小数生育しています。

ヤエヤマヒルギ の支柱根。この中を進むのはかなり大変。
というか、基本的に進もうとしてはいけない。

ヒルギダマシは11月頃から雨季に柿色の花を咲かせるキツネノマゴ科の植物です。エスプラネードの北端で一番最初に出くわすのがヒルギダマシでしょう。葉の表面は緑色でツヤがあり、裏面は白っぽくツヤはありません。太陽の光が当たるとキラキラ輝いて見えますが、全体に白っぽく見えるので、慣れてくると遠くからでもヒルギダマシと分かります。

ヒルギダマシ(Avicennia marina subsp. Eucalyptifolia
日本のヒルギダマシとは亜種で異なる。 Eucalyptifolia というのは
「ユーカリのような葉っぱ」という意味。

エスプラネード北端の公園エリアをもう少し粘り強く見ると、一番端の方に背丈ほどのヒルギモドキを観察できます。葉っぱの先がちょっと窪んでいるのが特徴です。日本では自生地が減少し、絶滅危惧種に指定されています。日本とオーストラリアでまったく同じ種類の木なので、どのような植物なのか見るだけでも価値があるでしょう。それにしても、「ヒルギダマシ」と「ヒルギモドキ」という名前は、ちょっと意地悪なネーミングですね。

ヒルギモドキ(Lumnitzera racemosa

この記事では4種類のマングローブを紹介しました。日本では珍しいマングローブをケアンズではお散歩ついでに観察できます。

cairnsfg

ケアンズの自然観察家。マングローブを徹底的に調べ、世界で最も希少とされるIUCN絶滅危惧種のヘインズオレンジマングローブがオーストラリアに自生していることを発見。2018年には新品種のダンガラオレンジマングローブの発見を発表。世界遺産Wet Tropicsカソワリアワード2017年ファイナリスト。日本野鳥の会会員。BirdLife Northern Queenslandケアンズ地区コーディネーター。

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